教師の兵法　その２６
「保護者は最大の敵であり、最強の味方であると心得る」

教師は、子どもたちをよりよく成長させようと時にはきびしく叱ることがあります。そのような時に文句を言ってくる保護者には、丁寧に対応しないと管理職や教育委員会を巻き込んだ大きなトラブルになってしまうこともあります。

教師としては、子どものためを思ってきびしくしたことに文句を言われるとやる気も自信も失ってしまいます。相手がモンスターペアレントの場合、延々と続く理不尽な攻撃に疲弊してしまうかもしれません。

私も若い頃は、頑なに「子どものためを思って指導しているのだから間違っていない」と思っていたので、クレームを言ってくる保護者を受け入れることはできませんでした。敵だとさえ思ったこともありました。しかしだんだん保護者の気持ちがわかるようになってきました。その大きな理由は、我が子が幼稚園や小学校、中学校へ通うようになったことでした。

例えば叱られたことなど我が子から学校の話を聞くようになると、「？」と思うことがあったのです。これまで自分も教師として同じような対応をしていたのですが、親の立場で考えるとちょっとそれはどうなのだろうと思ったのです。もちろん私は学校側の人間なので学校に文句を言うことはありませんでしたが、「ああこれが親の気持ちなのか」と気が付きました。

親というのは我が子が一番です。どんなに自分の子どもが間違っていたとしても、叱られたり悪いところを指摘されたりすればいい気持ちはしないものです。学校の指導に理解を示してくれる保護者も、本当のところは心の中は穏やかではないのかもしれません。このような親としての感情は、理屈ではなく単純に子どもへの愛情からくるもので、如何ともしがたいものだと思います。

このような親の気持ちが分かるようになってからは、「自分の子どもだったら・・・」と考えるようになり、子どもや保護者への物の言い方や接し方が変わりました。特に子どもをきびしく注意した時などは、必ず電話や場合によっては家庭訪問をしてきちんと説明をするようにしました。するとほとんどの保護者は好意的に受け止めてくれるようになり、子どもに対して同じように指導してくれました。

教師というのは、目の前の子どもをよりよく成長させたいと思うあまり、自分の思いを押し付けてしまうことがあります。悪いことだとは言いませんが、時には親の気持ちになって、「自分の子どもだったらどうしてほしいか」と考えてみることが必要です。「自分の子どもだったら」が考えづらければ、「自分が子どもだったら」と考えてみたらどうでしょう。

「自分の子どもだったら」、「自分が子どもだったら」と考えて保護者に接するようにしてみてください。保護者は最強の味方に変わるはずです。