子どもの問題行動への対応は、できるだけ迅速に取りかかり内容を正確に把握する。指導は、確認できた事実についてのみ行う。
問題への対応で大切なことは、迅速な対応、正確な内容把握、事実にもとづいた指導です。私は子どもの問題行動に対して、次のようなことを基本にして対応するようにしていました。
(1)できるだけ迅速に対応
(2)事実を正確に把握するための聞き取り
(3)聞き取った内容を照合・確認
(4)確認した事実にもとづいた指導
(5)確認した事実・指導した内容を保護者へ説明
ただしこれらはあくまでも基本的な対応であり、あきらかに犯罪と考えられることや命にかかわること、いじめなどの重大な問題については、対応の仕方は違ってくる場合があると考えてください。
基本的な対応は次のようなことです。
(1)できるだけ迅速に対応
配慮しなければならない事情がない限り、できるだけその日のうちに何らかの対応をしました。結果がどのようになっても、ほとんどの保護者が「すぐに対応してくれてよかった」と言ってくれました。速さは誠意だと考えています。
(2)事実を正確に把握するための聞き取り
①子どもから話を聞くときは、1人の子どもに対して2人の教師で聞き取る。 子どもの話は複数の教師で聞くべきです。後から子どもが事実をひっくり返したり、言った言わないで揉めたりするのを防ぐためです。さらに教師が1人で話を聞くことによる主観や推測が入ることを防ぎます。
②複数の子どもから話を聞くときは、別々にして1人ずつ聞く。
関係している子どもが複数いる場合、その子どもたちを一緒にして話を聞いてはいけません。子どもは友達と一緒だと本当のことを言いにくくなるからです。また、本当のことを言った子どもが後から責められないよう、誰が言ったのかわからないようにするためでもあります。
(3)聞き取った内容を照合・確認
①複数の子どもから聞き取った場合は、必ず聞き取ったことを照合する。
話が違っていることがあれば必ず子どもに確認します。確認時も教員は複数で対応した方がいいです。
②子どもの話が食い違っていても追求しない。
子どもたちの話が違う場合は、誰かが嘘をついているということになります。もちろん食い違っている部分の確認はしますが、しつこく聞いたり厳しく追及したりしないようにします。
この部分をやりすぎると、問題となる行動をした子どもの保護者が学校の指導に対して被害者意識を持ってしまい、後から文句を言ってきてこじれることが多いからです。食い違いは食い違いとして、そのまま子どもや保護者に伝えるしかありません。
③関係している子どもを全員集め、聞き取った内容を確認する。
最後は聞き取った内容を関わった子どもを全員集めて確認します。話に食い違いがある場合、この時点で子どもたちは誰が嘘をついているかがわかります。その時、本当のことを言っている子どもの心は必ず動きます。もしその後に本当のことが明らかになったとしたら、本当のことを話した子どもをこっそり呼んでほめるようにすると、その子はその後も正しいことを選択するようになります。
(4)確認した事実にもとづいた指導
指導は必ず複数の教師で行います。また、確認した事実にもとづくことのみを指導します。確認できていることは、根拠を示して指導できるからです。確認できないことや食い違っていることについては指導しないようにします。確認できていないことやあやふやのことについて、教師の主観や推測で指導することがないよう気をつけます。
①個別に指導する。
確認できた事実にもとづき個別に指導をします。今回の問題について正直に認めたり反省していたりしたら、その部分はしっかりとほめることが大事です。指導する時は、できるだけあっさりとさわやかにした方がよいです。また、指導の際に教師の推測や感想を伝えたり、以前の出来事や他の問題について指導したりしないように気をつけます。
②全員を集めて指導する。
複数の子どもがかかわっている場合は、最後に全員を集めて指導をします。個別に指導したときと様子が違う子どもは、今後注意が必要です。
(5)確認した事実・指導した内容を保護者へ説明
①できるだけ家庭訪問をする。
まずは保護者へ電話で連絡すると思います。その後、私はその日のうちに必ず家庭訪問をしました。電話よりも直接会って起きた出来事や指導した内容を伝えるほうが、絶対に正確に伝わります。家庭へは、必ず複数の教師で訪問するようにします。
子どもの帰宅と一緒に家庭訪問をするのが最もよいのですが、保護者の都合もあるので、第一報は電話で概略を伝えるとともに家庭訪問のお願いをします。
できるだけ両親がそろっている時間に訪問させていただくようにします。父子・母子家庭の場合、子育てに関わっているご家族が他にいれば、その方もいる時間に訪問させていただくようにします。
例えば教師が母親だけに説明すると父親に正確に伝わらず文句を言ってきたり、祖父母が文句を言ってきたりすることがあります。一人の保護者だけではなく、複数の保護者や子育てにかかわっているご家族にも説明をするように努力してください。
②子どもより先に保護者に連絡する。
問題行動の内容にもよりますが、常に気をつけたことは、子どもより先に保護者に連絡をするということです。先に子どもから保護者が話を聞くと、内容が正確に伝わらなかったり、我が子可愛さから全く違う話として受け取られてしまったりすることがあるからです。
そうは言っても働いている保護者が多いので、どうしても子どもの下校前に連絡がつかないことがあるかもしれません。その時は仕方がないので、とりあえず子どもに手紙を持たせ、必ずその日のうちに連絡を取りできるだけ家庭訪問をするようにします。多少時間は遅くなるかもしれませんが、問題がこじれるよりはましです。
この手間をかけなかったばかりに、苦労する教師がたくさんいます。
③保護者への報告は把握した事実・行った指導のみを伝える。
保護者へは、把握した事実・行った指導を正確に伝えます。食い違いやわからないこともそのまま伝えます。その際教師の推測や感想は話さないよう気をつけます。
食い違いがあったとしても、実は保護者は誰が悪いのかを分かっているのです。ただ簡単に子どもの非を認めたくないため、教師の推測や感想を都合よく受け止めてしまい、問題がこじれてしまうことがあります。
④協力をお願いする。
学校は今回のことをよい機会にして子どものよりよい成長を目指す、ということを子どもと保護者に伝え協力をお願いします。子どもに寄り添ってがんばっていきたいという学校の姿勢が保護者に伝わらないと、問題は解決するどころか保護者に不信感と敵意を持たれてしまいます。
以上が私の基本的な対応です。
若い頃の私は、子どもに嘘をつかれることがとても嫌でした。だから子どもが問題を起こしたら、白黒をはっきりさせて解決しようとしていました。
あくまでも私の経験ですが、何とか早く解決しようと必死になればなるほど、問題行動が起きた背景や起こした子どもについて教師の主観や推測が増えてきます。教師の主観や推測が入りやすいのは、問題が起きた時やその前後の子どもの言葉や態度、周囲との関係、その日の様子などの中で、しっかり確認しなかったことやあやふやなこと、食い違っていることなどです。
例えば、子どもAと子どもBが殴り合いのけんかをしたとします。
教師が駆け付けた時、Aが泣いていました。すぐに教師は原因を調べ、けんか両成敗として双方に注意をし、これからは仲良くするように指導をしました。
その後、保護者に連絡して説明する際に、「A君はとても悔しかったようで、私が駆け付けた時は泣いていました。子ども同士のけんかにはよくあることなので、ご家庭でも慰めてあげてください」と伝えました。
教師は、Aが泣いていたのは悔しかったからだろうと推測して保護者に伝えたのです。しかし、保護者が子どもに様子を聞いたところ、実はお腹を蹴られて苦しくて泣いていたということがわかりました。
このような場合、保護者によっては、いい加減な対応をした学校と蹴ったBに対して謝罪を要求してくるかもしれません。こうなると、問題行動を適切に解決することができず、クレーム対応に追われることになってしまいます。
教師の推測や主観は、問題行動への対応の方向を変えてしまうことになりかねないのです。
迅速、正確、事実は、問題対応にとても大切なことです。
(1)できるだけ迅速に対応
(2)事実を正確に把握するための聞き取り
(3)聞き取った内容を照合・確認
(4)確認した事実にもとづいた指導
(5)確認した事実・指導した内容を保護者へ説明
ただしこれらはあくまでも基本的な対応であり、あきらかに犯罪と考えられることや命にかかわること、いじめなどの重大な問題については、対応の仕方は違ってくる場合があると考えてください。
基本的な対応は次のようなことです。
(1)できるだけ迅速に対応
配慮しなければならない事情がない限り、できるだけその日のうちに何らかの対応をしました。結果がどのようになっても、ほとんどの保護者が「すぐに対応してくれてよかった」と言ってくれました。速さは誠意だと考えています。
(2)事実を正確に把握するための聞き取り
①子どもから話を聞くときは、1人の子どもに対して2人の教師で聞き取る。 子どもの話は複数の教師で聞くべきです。後から子どもが事実をひっくり返したり、言った言わないで揉めたりするのを防ぐためです。さらに教師が1人で話を聞くことによる主観や推測が入ることを防ぎます。
②複数の子どもから話を聞くときは、別々にして1人ずつ聞く。
関係している子どもが複数いる場合、その子どもたちを一緒にして話を聞いてはいけません。子どもは友達と一緒だと本当のことを言いにくくなるからです。また、本当のことを言った子どもが後から責められないよう、誰が言ったのかわからないようにするためでもあります。
(3)聞き取った内容を照合・確認
①複数の子どもから聞き取った場合は、必ず聞き取ったことを照合する。
話が違っていることがあれば必ず子どもに確認します。確認時も教員は複数で対応した方がいいです。
②子どもの話が食い違っていても追求しない。
子どもたちの話が違う場合は、誰かが嘘をついているということになります。もちろん食い違っている部分の確認はしますが、しつこく聞いたり厳しく追及したりしないようにします。
この部分をやりすぎると、問題となる行動をした子どもの保護者が学校の指導に対して被害者意識を持ってしまい、後から文句を言ってきてこじれることが多いからです。食い違いは食い違いとして、そのまま子どもや保護者に伝えるしかありません。
③関係している子どもを全員集め、聞き取った内容を確認する。
最後は聞き取った内容を関わった子どもを全員集めて確認します。話に食い違いがある場合、この時点で子どもたちは誰が嘘をついているかがわかります。その時、本当のことを言っている子どもの心は必ず動きます。もしその後に本当のことが明らかになったとしたら、本当のことを話した子どもをこっそり呼んでほめるようにすると、その子はその後も正しいことを選択するようになります。
(4)確認した事実にもとづいた指導
指導は必ず複数の教師で行います。また、確認した事実にもとづくことのみを指導します。確認できていることは、根拠を示して指導できるからです。確認できないことや食い違っていることについては指導しないようにします。確認できていないことやあやふやのことについて、教師の主観や推測で指導することがないよう気をつけます。
①個別に指導する。
確認できた事実にもとづき個別に指導をします。今回の問題について正直に認めたり反省していたりしたら、その部分はしっかりとほめることが大事です。指導する時は、できるだけあっさりとさわやかにした方がよいです。また、指導の際に教師の推測や感想を伝えたり、以前の出来事や他の問題について指導したりしないように気をつけます。
②全員を集めて指導する。
複数の子どもがかかわっている場合は、最後に全員を集めて指導をします。個別に指導したときと様子が違う子どもは、今後注意が必要です。
(5)確認した事実・指導した内容を保護者へ説明
①できるだけ家庭訪問をする。
まずは保護者へ電話で連絡すると思います。その後、私はその日のうちに必ず家庭訪問をしました。電話よりも直接会って起きた出来事や指導した内容を伝えるほうが、絶対に正確に伝わります。家庭へは、必ず複数の教師で訪問するようにします。
子どもの帰宅と一緒に家庭訪問をするのが最もよいのですが、保護者の都合もあるので、第一報は電話で概略を伝えるとともに家庭訪問のお願いをします。
できるだけ両親がそろっている時間に訪問させていただくようにします。父子・母子家庭の場合、子育てに関わっているご家族が他にいれば、その方もいる時間に訪問させていただくようにします。
例えば教師が母親だけに説明すると父親に正確に伝わらず文句を言ってきたり、祖父母が文句を言ってきたりすることがあります。一人の保護者だけではなく、複数の保護者や子育てにかかわっているご家族にも説明をするように努力してください。
②子どもより先に保護者に連絡する。
問題行動の内容にもよりますが、常に気をつけたことは、子どもより先に保護者に連絡をするということです。先に子どもから保護者が話を聞くと、内容が正確に伝わらなかったり、我が子可愛さから全く違う話として受け取られてしまったりすることがあるからです。
そうは言っても働いている保護者が多いので、どうしても子どもの下校前に連絡がつかないことがあるかもしれません。その時は仕方がないので、とりあえず子どもに手紙を持たせ、必ずその日のうちに連絡を取りできるだけ家庭訪問をするようにします。多少時間は遅くなるかもしれませんが、問題がこじれるよりはましです。
この手間をかけなかったばかりに、苦労する教師がたくさんいます。
③保護者への報告は把握した事実・行った指導のみを伝える。
保護者へは、把握した事実・行った指導を正確に伝えます。食い違いやわからないこともそのまま伝えます。その際教師の推測や感想は話さないよう気をつけます。
食い違いがあったとしても、実は保護者は誰が悪いのかを分かっているのです。ただ簡単に子どもの非を認めたくないため、教師の推測や感想を都合よく受け止めてしまい、問題がこじれてしまうことがあります。
④協力をお願いする。
学校は今回のことをよい機会にして子どものよりよい成長を目指す、ということを子どもと保護者に伝え協力をお願いします。子どもに寄り添ってがんばっていきたいという学校の姿勢が保護者に伝わらないと、問題は解決するどころか保護者に不信感と敵意を持たれてしまいます。
以上が私の基本的な対応です。
若い頃の私は、子どもに嘘をつかれることがとても嫌でした。だから子どもが問題を起こしたら、白黒をはっきりさせて解決しようとしていました。
あくまでも私の経験ですが、何とか早く解決しようと必死になればなるほど、問題行動が起きた背景や起こした子どもについて教師の主観や推測が増えてきます。教師の主観や推測が入りやすいのは、問題が起きた時やその前後の子どもの言葉や態度、周囲との関係、その日の様子などの中で、しっかり確認しなかったことやあやふやなこと、食い違っていることなどです。
例えば、子どもAと子どもBが殴り合いのけんかをしたとします。
教師が駆け付けた時、Aが泣いていました。すぐに教師は原因を調べ、けんか両成敗として双方に注意をし、これからは仲良くするように指導をしました。
その後、保護者に連絡して説明する際に、「A君はとても悔しかったようで、私が駆け付けた時は泣いていました。子ども同士のけんかにはよくあることなので、ご家庭でも慰めてあげてください」と伝えました。
教師は、Aが泣いていたのは悔しかったからだろうと推測して保護者に伝えたのです。しかし、保護者が子どもに様子を聞いたところ、実はお腹を蹴られて苦しくて泣いていたということがわかりました。
このような場合、保護者によっては、いい加減な対応をした学校と蹴ったBに対して謝罪を要求してくるかもしれません。こうなると、問題行動を適切に解決することができず、クレーム対応に追われることになってしまいます。
教師の推測や主観は、問題行動への対応の方向を変えてしまうことになりかねないのです。
迅速、正確、事実は、問題対応にとても大切なことです。